本の紹介 住吉物語
和製シンデレラ、宮腹の中納言の姫君の話である。
美しい主人公が継母に虐められ、失意の中で王子様(素敵な男性)に見初められ、ハッピーエンドという、いわゆる「シンデレラ」は世界中で割とメジャーな話らしい。
シンデレラの影響ではなく、美しい継子に対する継母の嫉妬というものは凄まじいようだ。
わからないでもない…
しかも一夫多妻制では、女性は誰しも継母の立場になってしまうのだから。
住吉物語は平安時代に描かれているため、現存している世界中のシンデレラの中でも割と古い部類ではなかろうか。
そして、その真髄は最近のラノベにも通じるのだと思う。
住吉物語は現代ラノベ風のタイトルをつけると、
「継母のいじめに耐えられず住吉に逃げるので、もう私には構わないでください!」
と言ったところだろうか。
とはいえ、住吉物語、特筆すべきは継母が姫君に意地悪なだけで、しかもきっかけは入内させるかさせないか、姫君の母親が入内を遺言で残していたせいで、それまでは距離はあれでもそんなに関係は悪くなかったんじゃ?と思う。
継母の娘たちや父親とは姫君は仲は悪くないのだから、自分の娘より格上の結婚をするなんて!という嫉妬が出てしまったのかもしれない。
でも、姫君の母親が継母になっていた方がより苛烈ないじめが姉妹たちにされていた気もするんだよなぁ…
とはいえ、入内を諦めた後に姫君に縁談を持ちかけた少将を末娘の婿にするなんて、誰もが悲劇に陥るのが目に見えている。
意に染まない相手との無理矢理な結婚を前に住吉に逃げた姫君は思いがけない幸運を得るのだが…
この話、女性たちは主役の姫君だけでなく、母親、継母、腹違いの姉妹を持つ姫、姫の侍従の立場からも読んで感情移入をしたに違いない。
仮に母親が生きていて、姫君の入内がうまく行っても父親が中納言では更衣にしかならないのでは?
更衣ではなかなか帝のもとに侍ることもできず、また寵愛を貰えても光源氏の母親の桐壺の更衣の如く苛烈な虐めに遭う可能性が高いのが、なんとも…
貴族の娘に生まれたからと言って、無条件で幸せになれるわけではないのだろう…


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