映画の紹介 緑の牢獄
緑の牢獄 黄インイク
西表島に戦前60年に渡って存在した西表炭坑。坑夫として働いたのは地元の人ではなく、台湾から渡ってきた人たち。
坑夫も監督も台湾人、開発を進めていたのは三井系という、地元はほとんど関知しないばかりか、ほとんどなんの還元もなかったことが伺える。
坑夫たちを管理する役目で同じく台湾からやってきた楊添福氏の養女橋間良子さんは台湾人の中でたった一人西表島に残り、台湾語と日本語を入り混ぜてポツポツと話す。
橋間のおばあは帰化して、こどももいるが、ほとんど会えなかったり、行方不明になっていたり、その人生を振り返っても養女の件も、西表行きも結婚相手も自分で何かを決めたことはなさそうだ。
坑夫にはゴロツキが多く、ろくに働かず、借金ばかり増やす坑夫、その坑夫を抑えるために呼ばれる警察、借金ばかりの坑夫が帰るときにも船賃を出す監督と行った感じで現場はほとんど何も生産をしていないのだ。
一方で、資本家はだいぶ懐を温めたんじゃないかなぁ…
台湾が日本の一部だった時には、西表は台湾に資材を運搬するには近くて良い場所だったろうし。
坑夫たちはわずかばかりの金をモルヒネに変え、わずかばかりの金を持って台湾に帰り、またモルヒネ目的に西表にやってくる。
戦後炭坑は解散、台湾に帰った人もいれば帰れない人も。
橋間のおばあの家族もいる面に残り、養父が孫のために日本の籍を取り、そして今に至る。
でも墓には楊帰化橋間の名が残る。
台湾語を使い続ける橋間のおばあは台湾に帰りたかったんじゃないかな、と思う。
鬱蒼としげるマングローブ林に隠されて見えないが、そこにはかつての炭坑と台湾に帰れなかった人が眠る。
生き証人が死に、炭坑がマングローブに埋もれると、いつしか忘れられてしまう。
記憶をつなぎ残すのがいいのか、それともゆっくりと時間をかけて忘れ去るのがいいのかはわからない。
細々と残る記憶と老いて余命いくばくのない橋間のおばあの姿に、歴史に埋もれる人と出来事の死をしみじみと感じる西表炭坑の墓標のような作品でした。
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