国際結婚はキラキラだけじゃない!山あり!谷あり!闇もある!?

ガーナ人イスラム教徒と国際結婚して日本で、多様性と異文化、多様な価値観に揉まれながら生きる非イスラム教徒の日本人妻のブログ

本の紹介 また、桜の国で

また、桜の国で 須賀しのぶ






1938年ポーランドに降り立ったのは白系ロシア人を父に持つ日本人外交官、棚倉慎。

第二次世界大戦前のヨーロッパ、ドイツではすでにユダヤ人排斥が始まり、棚倉もドイツからポーランドに向かう途中の列車の中のトラブルでユダヤ人青年ヤンと知り合う。


ここまでで思い出す歴史上の人物がいるが、棚倉は杉原千畝の同じ学校の後輩であり、樋口季一郎の部下としてユダヤ人と関わりがあるという設定で、日本では勢いのあったドイツとの同盟を結ぶにあたっても、ユダヤ人差別は入ってこなかったんだろうな、と思う。

史実でも杉原千畝の発行したビザで一時的でも日本に渡ってきているのだから。

物理的な距離があると日本にしてもドイツにしても現地の細かい情報までは伝わらず、表面的な情報だけで踊らされてしまうものなのかもしれない。



ポーランドの日本大使館にはポーランド人のシベリア孤児として日本にきたことのある職員もおり、棚倉自身も幼き日に一瞬の邂逅で友人となったカミルをポーランドで探す。


ポーランドという国はドイツとのロシアという大国に挟まれ、常に侵略を受け分割されと悲劇の歴史を持つ。

時代は否応なく、第四次ポーランド分割、第二次世界大戦、独ソ戦へと突入していく。

ヤンは強制収容所に送られ、日本はワルシャワの大使館を閉めざるをえなくなる。


棚倉もヤンもカミルも祖国で自分が何者かを悩み苦しんだ経験があり、それぞれが決意を持ってポーランドでそれぞれの戦いに挑んでいく。

タイトルの「また、桜の国で」は、ワルシャワ蜂起で再会した棚倉、ヤン、カミルが最後に約束したことでこの約束が果たされるかは最後まで読まないとわからないが、本編を通して流れるショパンの「革命のエチュード」が最後も流れるのはまだまだ戦いの日々が続いていくことが示唆されているのだろう。