本の紹介 トンネルのむこうへ
この人とはきっと何日でも話をしていられるだろうと思った人がいる。
それが大坂なおみ選手のお母様の大坂環さんだ。
本書は、大坂環さんが書いた本である。
大坂なおみ選手を育てた母親による子育て論と思いきや、環さんは圧倒的裏方で、どちらかというと娘をテニスプレーヤーにしたい夫に振り回される母親で、見方によっては
とんでもない外人夫に搾取されている日本人妻
になってしまうだろう。
決して裕福ではないし、環さんもなおみ選手もお姉さんのマリさんも我慢の連続だったのではないだろうか、と思う。
アメリカでは、嫌がらせに近い人種差別もあり、当事者でなければ「そんなことないでしょ?」「相手の勘違いだよ」で済まされがちなのだろうが、「そういうものだから」というレベルでの嫌がらせが根の深さを感じる。
だからこその物議を醸したテニスの試合会場に持ち込んでしまうほど、なおみ選手の抗議もあったのだろう。
そして、なおみ選手の気持ちも受けてきた人種差別も当事者でなければわからないだろう。
夫の家族がいる国といえど、環さんは働き通しだ。
そんな環さんの苦労も見ず、計画的に引っ越すのならまだしも、昨日の今日で子どもを連れ去るように引っ越して、仕事を辞められない環さんに「男がいるんだろ!」と言い掛かりをつける旦那は正直捨てても良いと思う。
他の人ならブチ切れているだろうことも、踏ん張れる環さんの原動力は2人の娘であるだろうし、家族としてone unitで目指すところがあったからだろう。
あとは、上の世代からあれこれ言われることに対しての反骨精神もあるだろう。
振り返れば、
お金がない
働き通し
ずっと泣いていた
という環さん。
テレビで見た時は、
だって大変なんだもん、あははは
と笑っていた。
笑えるなら大したことないじゃん、じゃないのだ。
笑わないとやってられないくらいにヤバいレベル
で大変だったと思う。
辛いと言って泣けるレベルはとっくに通り越していて、笑ってないと崩壊しそうなくらいヤバいくらい大変なことってあるよね。
その時は2人の娘というより、旦那の後処理のことを言っていた。
大変なときだからこそ笑っておけば、もしかしたらとてつもない困難を乗り越えることだってできるのかもしれない。
その困難を経験したからこそ持てる優しさや大らかさがあるものだ。
楽な穏やかな人生なんてものはないけど、誰かに何かを決められたそこそこの人生よりも、「自分で選んだんだ、文句あるか!」と茨の道に踏み出して、傷だらけになる人生だって良いじゃないか。
ボロボロになったって、きっと自分で考えて選んだこそ見える人生があるんだから。


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