本の紹介 太陽と月の大地 スペイン童話
太陽と月の大地
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スペインで読み継がれている16世紀のスペイングラナダを舞台にしたキリスト教徒の伯爵令嬢と幼馴染のイスラム教徒の少年の淡く共にいることの叶わない恋物語。
スペインのコルドバを中心に数百年栄えたイスラム王朝に対するレコンキスタの結果、キリスト教が支配することになった。初めはイスラム教徒に対する寛容な政策も同化政策に変わり、言語も文化も禁止される、激しく移り変わる時代の話。
宗教や身分の枠を超えて、祖父同士が無二の親友、後を継いだ伯爵がいくら友好的でも、変わりゆく社会に伴って変わっていく人の考え、そして起こった争い。街を焼き、人は死ぬ。
戦いを生きのび、奴隷市から伯爵の手に救い出されても、奴隷としての身分でないとグラナダに残れないために自由の身になって父と共にアフリカに渡る決心をする。
その後、アフリカから送られる手紙からは誰かの妻となった伯爵令嬢とは二度と会うことはなくとも慈しみ合い、常に心にある存在だということがわかる。
互いの孫が平和ごっこができるようにとのささやかな願いを込めるのは、争いを経験し、それが過ぎれば遠くから見れば
「みんなただの人間」
だと言うことを知ったからだろう、彼らの祖父がそうだったように。
この話は「悲恋」となっている。
実際思い合いながらも結ばれず、海を隔てて別れてしまったが、手紙からわかる2人の想いは手に入れることの難しい
本当の愛
ではないのか、と思う。
一部「ロミオとジュリエット」のように思えるエピソードもあり、
2人の身分や宗教を考えるとロミオとジュリエットのような展開も期待できる。
争い終わって再開した時には2年の月日が経っていて、少年の方が令嬢に対する想いに区切りをつけている。
遠く離れても年月が過ぎようとも褪せることのない本当の愛へと昇華させている。
激しく鮮烈な熱情も若い時分はいいが、その熱を穏やかに相手を慈しむ愛情に熟成させることは大人の特権なのだと思う。
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