去年読んだ本の紹介 オリンピックの身代金
オリンピックの身代金
一万円選書の一冊。
1964年の東京オリンピック開催を盾にテロ攻撃を仕掛けるのは、見目麗しく秀才の東大大学院に通う青年だった・・・
東京オリンピック開催までの2か月余りをテロリストの青年視点、警察視点と行きつ戻りつしながら話が進み、読者は今後何が起こるのかを警察視点で、その原因を青年視点で追うことができる。
関係者の立ち位置がはっきりした1巻終盤からはページをめくるのももどかしい。
東京は誰もがあこがれる夢の都なのか、それとも多くの若き命を飲み込んできた魔都なのか?
東京の裕福な名家で生まれ育てば幸せなのか、イケメンで頭が良くてモテればどこに生まれても幸せなのか?
そんな相反する価値観がぶつかり合う話で、
幸せってなんだっけ??
と思う。
誰もが誰かの気持ちや抱える問題を共有することは難しいし、おもんぱかることもできないということがわかる。
それはたとえ兄弟であろうと、学校で同じ時間を過ごした相手でもだ。
ざらりとした相手への嫉妬や哀れみは決して消すことはたぶんできない。
最後は関東大震災と東京大空襲で焼野原になった東京を知る生き証人も出てきて、オリンピックと言う平和を象徴する祭典と新しい時代の幕開けに立ち会う。
2021年の東京オリンピックを題材にした新たな「オリンピックの身代金2021」があれば、また違う話になるのだろうな、と思う。
ちなみに作者奥田英朗氏の他の作品も面白かったです!
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